一人一票(2017衆院)裁判

一人一票(参院)裁判

判決全文

個別意見要旨 多数意見要旨
2017年10月22日施行衆院選(小選挙区)(本件選挙)に関する、1人1票裁判が始まりました。
裁判の進捗状況などは、こちらのサイトで随時ご紹介させていただきます。
今回の裁判でも、全小選挙区(289選挙区)で原告が立ち、選挙の翌日(10/23)に、全14高裁・高裁支部で一斉提訴されました。
本件選挙は、平成23年大法廷判決が廃止を要求した「1人別枠制」の選挙区割りから、わずか6県において各1議席ずつ減らしただけの選挙区割りで行われました。1人別枠制が廃止されたものとは到底評価できません。
昨日行われた本件選挙の選挙制度は、投票価値の不平等のために、
人口の少数が国会議員の多数を選んでしまう選挙であり、
そして、そのように選ばれた国会議員が、多数決で法律を作り、総理大臣を選んでしまうために、
 結局、少数の国民の意見が立法を決定し、総理大臣を決定するというシステムになっています。
本件選挙は、人口の42%が国会議員の過半数を選出する選挙です。
本来、選挙が憲法違反となると、憲法上は選挙は無効です。
となると、無効の選挙で選ばれた国会議員や内閣総理大臣は国会議員や内閣総理大臣としての資格がない、無資格者ということになります。
そして、その無資格者が憲法改正の発議をするということは、憲法は全く予定していません。
自民党は、党改憲原案を今秋(2017年)の臨時国会に提出する考えを表明していましたが、冒頭解散で本件選挙となりました。
本件選挙で、改めて自公が2/3議席を確保したことから、次の国会で、いよいよ国会議員による具体的な議論が始まるでしょう。
 【今回の裁判で最も注目したい点】
今回の裁判で最も注目したい点は、
【最高裁判所は、違憲状態の選挙で選ばれた国会議員による憲法改正の発議を許すのか否か】
です。 

過去の1人1票裁判

平成23年最高裁大法廷判決(衆)

 住所による一票の住所差別に合理性がないことは、下記の通り、平成23年3月23日最高裁大法廷判決(以下、「平成23年大法廷判決」という)で明確に判示されています。

                記

(平成23年大法廷判決9頁5~11行)

「しかし、この選挙制度によって選出される議員は、いずれの地域の選挙区から選出されたかを問わず、全国民を代表して国政に関与することが要請されているのであり、相対的に人口の少ない地域に対する配慮はそのような活動の中で全国的な視野から法律の制定等に当たって考慮されるべき事柄であって、地域性に係る問題のために、殊更にある地域(都道府県)の選挙人と他の地域(都道府県)の選挙人との間に投票価値の不平等を生じさせるだけの合理性があるとはいい難い。」

最高裁調査官による平成23年最高裁判決の解説

「衆議院議員定数訴訟最高裁大法廷判決の解説と全文」と題する論文(ジュリストNo.1428。2011.9.1 56~62頁)-岩井伸晃・最高裁判所調査官、小林宏司・最高裁判所調査官執筆-は、

「そして,本件選挙時における前記の較差が,既に合理性の失われた1人別枠方式を主要な要因として生じたものである以上,当該時点における本件選挙区割りは憲法の投票価値の平等の要求に反する状態に至っていたとの評価を免れないとされたものである。本件選挙時よりも較差自体の数値は大きかった過去の選挙について,平成11年最高裁判決①(選挙直近の国勢調査に基づく最大較差2.309倍)及び平成13年最高裁判決(選挙時の選挙人数に基づく最大較差2.471倍)は,当時の選挙区割りが憲法の投票価値の平等の要求に反する状態に至っていないとしているが,その各時点では,なお1人別枠方式が前記の合理性を維持していたものと考えられるから,これらの先例と今回の判断とは整合的に理解することができるものといえよう4)。」(同書60頁本文右欄下11行~61頁本文左欄6行)
4)「従来の最高裁判例において合憲性の判定における較差の数値に係る量的な基準が示されたことはなく,本判決においても,この点は同様であり,憲法の投票価値の平等の要求の制約となる要素として国会において考慮された事情にその制約を正当化し得る合理性があるか否かという質的な観点が問題とされ,1人別枠方式についてはその合理性に時間的限界がありこれによる較差を正当化し得る合理性は既に失われたと判断されたものであって,単純に較差の数値のみから直ちに合憲・違憲の結論が導かれるものではないと解される(本判決は,区画審設置法3条1項所定の区割基準につき,「投票価値の平等に配慮した合理的な基準を定めたものということができる」と判示しているが,これが最大較差2倍という数値を画一的に量的な基準とする趣旨のものでないことも,その前後の説示の内容等から明らかであるといえよう)。」

と記述します(赤、下線、引用者)。

 岩井伸晃・最高裁判所調査官、小林宏司・最高裁判所調査官は、あくまでも、
「投票価値の平等」(即ち、「人口比例選挙)が、基準(ベース)であって、もし仮に、「投票価値の平等」(即ち、「人口比例選挙」)からの乖離がある場合は、憲法上、『その「投票価値の平等」(即ち、「人口比例選挙」)からの乖離を正当化するために国会で考慮された事情に、当該乖離を正当化し得る合理性があることが、必要である』(同論文・61頁脚注4)の第一文・前半部分)と解しています。

平成28年改正法、平成29年改正法(アダムズ方式)

 国会は、平成23年大法廷判決(衆)、平成25年大法廷判決(衆)、平成27年大法廷判決(衆)の示した【憲法の投票価値の平等の要求の規範=「一人別枠方式の廃止」 】に応えて、平成28年改正法、平成29年改正法を立法し、平成32年の国勢調査後に人口比例配分方式であるアダムズ方式により、各都道府県に議席を再配分することとしました。

 国の提出した証拠(乙10)によれば、平成22年の国勢調査の結果に基づきアダムズ方式により各都道府県の小選挙区定数の配分を行った場合、旧区画規定から7増13減が必要となることが認められます。

 具体的には、

①青森、②岩手、③宮城、④新潟、⑤三重、⑥滋賀、⑦奈良、
⑧広島、⑨愛媛、⑩長崎、⑪熊本、⑫鹿児島及び⑬沖縄

①埼玉、②千葉、③神奈川、④愛知

①東京

   
→    各1減

→    各1増

→    3増

本件選挙

 本件選挙は、平成28改正法、29年改正法をうけて、「0増6減」( ①青森、②岩手、③三重、④奈良、⑤熊本及び⑥鹿児島につき各1減)を前提に、19都道府県97選挙区において改められた区割りで行われました。
この区割りによれば、

平成27年国勢調査の結果による人口でみた場合、

最小選挙区である【鳥取2区】では、283,502人で議員1人を選出するところ、

最大選挙区である【神奈川16区】では、554,516人で議員1人を選出します。

最小選挙区と最大選挙区の人口差は、283,502人 : 554,516人=(1 (鳥取2区)対1.956倍(神奈川16区) )

これを1票の投票価値に換算すると、

1票 【鳥取2区】  対 0.51票【神奈川16区】 でした。

原告の主張

原告は、

(1)
旧区画規定(1人別枠方式)は、平成23年、25年、27年の各最高裁大法廷判決では、その合理性を否定され、廃止するよう求められていた。
(2)
当該12都県については、旧区画規定(1人別枠方式)による定数配分がそのまま維持されており、そのことは国も答弁書で自認している。
(3)
従って、12都県の選挙区割りは、【憲法の投票価値の平等の要求】に反する状態である。
(4)
そして、該12都県の選挙区割りの当該【憲法の投票価値の平等の要求に反する状態】の瑕疵により、全選挙区の有機的一体性により、結果として、全選挙区割りも、【憲法の投票価値の平等の要求に反する状態】の瑕疵を帯びることになる(昭51年、昭60年大法廷判決)。
(5)
従って、本件選挙は憲法98条1項によりその効力を有しない(無効)である、

と主張しました。

国の主張

 国は、主位的主張として、【2倍未満・合憲説】を根拠として、『本件選挙時に投票価値格差(最大)2倍を超えた選挙区の数はゼロであり、一人別枠方式の根本的問題は、本件選挙では解決されているので、本件選挙は合憲である』旨主張しました。

本件選挙の各選挙区の有権者数及び投票価値の一覧表&全国マップ

非人口比例選挙を可能にする自民改憲案47条

(1) 自民党改憲案47条は、人口以外の要素を勘案して選挙区を定めるものと規定しているので、明らかに、人口比例選挙を否定しています。

(現行憲法) 第47条 (自民党改憲案) 第47条
 選挙区、投票の方法その他両議院の議員の選挙に関する事項は、法律でこれを定める。  選挙区、投票の方法その他両議院の議員の選挙に関する事項は、法律で定める。
 この場合においては、各選挙区は、人口を基本とし、行政区画、地勢等を総合的に勘案して定めなければならない。

(2) 但し、この自民党改憲案(47条)は、主要新聞の社説で指摘されているとおり、多くの問題を含みます。

【毎日新聞】 参院合区解消の自民改憲案 いいとこ取りは許されぬ (2018年2月17日) 
http://mainichi.jp/articles/20180217/ddm/005/070/162000c

【徳島新聞】 自民合区解消案 改憲より現実的な手法を (2018年2月17日) 
http://www.topics.or.jp/editorial/news/2018/02/news_15188295811108.html

【日経新聞】 合区解消案は利己的すぎる (2018年2月20日) 
https://www.nikkei.com//article/DGXKZO27119700Z10C18A2EA1000/

【中日新聞】 合区解消改憲案 法の下の平等に反する (2018年2月20日) 
http://www.chunichi.co.jp/article/column/editorial/CK2018022002000105.html

【読売新聞】 自民合区解消案 参院の権限の議論が足りない (2018年2月21日)
http://editorial.x-winz.net/ed-87999

【産経新聞】 合区解消の改憲案 無理に無理を重ねるのか(2018年2月21日) 
http://www.sankei.com/column/news/180221/clm1802210002-n1.html

君塚正臣横浜国大教授論文(判例時報2296号148頁)

君塚教授は、平成27年最高裁大法廷判決の評釈として、以下のとおり述べます。

「以前から言われてきたように、合憲性判断基準としての「2倍」に憲法上の根拠は希薄であろう。選挙権が憲法の基本である民主主義・立憲主義の根幹であるとすれば、その侵害、不平等はおよそ許されず、本来、一人一票が基本である。これが現在、圧倒的に有力である。司法審査基準としても厳格審査基準が当然であり、やむにやまれぬ目的と必要最小限度の手段(較差)であることを国側が示すべきである。・・・(略)・・・選挙権が民主主義や立憲主義の根幹であることに鑑み、違憲であるときには原則としてその宣言は必要である。」(強調 引用者)

 1人1票原則を肯定する論文が、判例時報という権威ある法律雑誌に掲載されたことは、大きな意味があると考えます。

 

高裁判決(一覧)

裁判所 弁論期日(平成29/2017年) 判決期日(平成30/2018年)    結果
札幌高裁 12月21日(木)14:30 2月6日(火)13:10 (全文) (要旨) 合憲
仙台高裁 12月22日(金)13:30 2月2日(金)15:00 (全文) (要旨) 合憲 (留保付)
仙台高裁 秋田支部 12月20日(金)11:00 1月30日(火)13:30 (全文) (要旨) 合憲 (留保付)
東京高裁 12月5日(火)15:00 1月30日(火)16:00 (全文) (要旨) 合憲 (留保付)
名古屋高裁 12月21日(木)11:00 2月7日(水)16:00 (全文) (要旨) 違憲状態
名古屋高裁 金沢支部 12月27日(水)14:00 1月31日(水)15:30 (全文) (要旨) 合憲 (留保付)
大阪高裁 12月19日(火)14:30 1月31日(水)13:15 (全文) (要旨) 合憲 (留保付)
広島高裁 2018年2月14日(水)13:30 3月30日(金)11:00 (全文) (要旨) 合憲 (留保付)
広島高裁 岡山支部 12月25日(月)14:00 2月15日(木)15:00 (全文) (要旨) (骨子) 合憲 (留保付)
広島高裁 松江支部 12月22日(金)13:10 2月21日(水)13:10 (全文) (要旨) 合憲 (留保付)
高松高裁 12月26日(火)13:15 1月31日(水)13:10 (全文) (要旨) 合憲 (留保付)
福岡高裁 12月25日(月)15:00 2月5日(水)11:00 (全文) (要旨) (骨子) 合憲 (留保付)
福岡高裁 宮崎支部 2018年1月12日(月)13:15 2月19日(月)13:30 (全文) (要旨) (骨子) 合憲 (留保付)
福岡高裁 那覇支部 12月11日(月)14:00 1月19日(金)14:00 (全文) (要旨) 合憲 (留保付)

 平成30年30日現在、16件の高裁判決(全国弁護士グループの裁判が14件、山口弁護士グループの裁判が2件)が14高裁・高裁支部で言渡され、以下の3種類の判決結果となりました。

違憲状態  :1件(名古屋高裁)
留保付合憲:13件
合憲     :2件(札幌高裁、広島高裁3部)

 札幌高裁、広島高裁(3部)は、国の主位的主張をそのまま認め、投票価値の不平等が2倍未満という理由で本件選挙を合憲としました。

 しかし、13の高裁は、以下(①+②)の2つを理由に、本件選挙を合憲と判断しました(ここでは、「留保付合憲」判決といいます。)。

 ① 投票価値の不平等が2倍未満であること。
     +
 ② 平成28年改正法が、平成32年国勢調査後の衆院小選挙区の総定数の各都道府県への定数配分は、同国勢調査結果に基づき、アダムス方式(人口比例方式)により行われることを定めており、本件選挙の選挙区割りは、それまでの暫定的なものであること。

 これらの2つの合憲判決と13の留保付合憲判決に対し、国民としては大いに不満は残ります。
 
 しかし、平成32年以降の議席配分とはいえ、

 平成23、25、27年の 3つの最高裁大法廷判決が、アダムズ方式(人口比例方式)を採用する、平成28年改正法の立法を促しました
このことは、 裁判所の判決によって、1人1票実現が着実に進んでいることを証明しています。

 アダムズ方式が実施されれば、各都道府県への人口比例による定数配分が実現します。
 ただし、完全な人口比例(1人1票)を実現するためには、アダムズ方式では足りず、最高裁が、 「憲法は1人1票を要求している」との判決を言渡すことが必要です。
 平成21~27年の間に、8の高裁裁判体は、 「憲法は人口比例選挙を要求している」とする判決(1人1票判決)を言渡しました。

  最高裁の判決は、各裁判官の1人1票による「多数決」で決まります。全最高裁裁判官(15名)のうちの8名以上の裁判官が、 「憲法は1人1票を要求している」と判断すれば、1人1票判決が生まれます。
現在、1人1票賛成派裁判官は鬼丸かおる裁判官、山本庸幸裁判官のお二人です。

 また、国民は、最高裁判官国民審査で、1人1票に反対の最高裁裁判官への有効投票の過半数の不信任票(×印)で、1人1票に反対の最高裁裁判官を罷免できます。

 最高裁判決は、年内に言渡される見込みです。

 最高裁判決が1人1票(人口比例選挙)判決であることを期し、1人1票賛成の裁判官に対し、引き続きエールをお送りするとともに、1人でも多くの裁判官が憲法は1人1票を要求していると判断されるよう、世論を高めてまいりましょう。

 最高裁判決までの数ヶ月間に国民ができることは、情報を広めること、情報発信です。当国民会議も以下のツールを用いて情報発信しております。次回選挙で国民一人一人が、等価値の1票を投じることができるよう、1人1票実現の重要性を発信してまいりましょう。

最高裁弁論

最高裁大法廷弁論期日:
平成30年11月28日(水)午後1時30分。
快晴。暖か。

 午前中は山口弁護士グループの弁論が行われ、午後1時30分から、全国弁護士グループの弁論が行われました。

 正確にはわかりませんが、午後の部は、おそらく60名ほどの傍聴人が、弁論を傍聴しました。
 
 原告側からは、
 升永英俊弁護士、久保利英明弁護士、伊藤真弁護士、原告本人、の4名が陳述されました。

 被告側からは、舘内比佐志指定代理人が陳述されました。

 2009年より、原告側の主張は、一貫して、従来の「法の下の平等」の観点からの「人権論」に基づいてではなく、「憲法の定める国家の意思決定の手続きのルール」の観点からの「統治論」に基づく主張を展開してきました。

 今回も、従前と同様に、原告側は「統治論」に基づく弁論でしたが、今回の弁論は、今までで一番シンプルで分かりやすく、回を重ねるごとに、研ぎ澄まされていっている印象を受けました。

 弁論後、霞ヶ関の司法記者クラブで記者会見が行われました。

 会見の模様は、支援者の方が記録して下さいました。 とても有り難いです。

【「1人1票裁判」の最高裁弁論後の記者会見2018.11.28】
https://www.youtube.com/watch?v=JIzqopeCONo&feature=share


升永英俊弁護士
(クリックで「弁論の要旨」全文へ)
(クリックで「弁論陳述草稿」全文へ)

(弁論の内容)

【陳述の構成】

第1部
Ⅰ 憲法14条等に基づく「人権論」は、憲法論として、主権の本質論を欠くという欠点を持っているという議論;
Ⅱ 統治論の内容;
Ⅲ 【統治論を採用しない場合、その理由を記述しない上告棄却の判決文は、憲法76条3項、民訴法253条1項、行政事件訴訟法7条違反であるという議論】;

第2部 国の、【2倍未満合憲説】、【H24、25、28、29年の各改正法による合憲説】

に対する各反論から成ります。

******
第1部
Ⅰ 憲法14条等に基づく「人権論」は、憲法論として、主権の本質論を欠くという欠点を持っているという議論;

昭和51(1976)年~平成29(2017)年の41年間、各最高裁大法廷判決は、衆院選(小選挙区)又は参院選(選挙区)の1票の価値の格差が合憲か、違憲か争われた各裁判を、一貫して、憲法14条等に基づく人権論の枠内で、議論し、判断してきました。

しかしながら、この人権論は、国会が匙加減で決めた、ある選挙区の1票の価値を、他の選挙区の1票の価値と比較して、両者間の較差が合憲であるか違憲であるかを判断するに終止するものです。

ハッキリ言えば、この人権論は、

【選挙とは、【主権者が、国会議員を通じて、主権者の多数の意見で、主権を行使するため】に、主権者が、国会議員を選出する手続である】

という肝心・要の【主権者が主権者の多数決で主権を行使するという、主権の本質論を欠くという欠点】を含んでいます。

そこで、この 【主権者の主権の行使という本質】 を正面から捉えて、1票の価値の格差の憲法問題を考察しますと、

憲法56条2項、1条、前文第1文は、

【「正当(な)選挙」で
(即ち、【①「主権」の「存する日本国民」(憲法1条)が、
② 「国会における代表者を通じて、」(憲法前文第1文前段)
③ 実質的に、主権者の「過半数で」 「両議院の議事」 を 「決す」る(憲法56条2項)】
の①、②、③の3要素を保障する選挙で)(即ち、人口比例選挙で)、
「主権の存する日本国民」(憲法1条)が、投票するという「行動」(憲法前文第1文前段)をすること】

を要求している、と解されます。

ここでは、この議論を「統治論」といいます。

もっとも、この議論は、「主権論」と呼んだ方が、「人権論」 との対比で、その差がよりハッキリします。
しかし、私共は、従来統治論という言葉を用いてきましたので、以下の私の陳述では、従来の統治論という言葉を用います。

以下、統治論に基づいて、議論します。

(つづく)


久保利英明弁護士
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(「弁論要旨の基本」抜粋)

1.私たちは昭和51年4月14日最高裁大法廷判決とはまったく異なる理論構成による違憲無効の主張を行ってきた。

私の選挙違憲無効の論理は、昭和51年4月14日最高裁大法廷判決とはまったく異なる。即ち、憲法14条で規定されている法の下の平等違反による選挙無効を直接主張するのではなく、主権者による多数決という統治論に基礎を置く、国家ガバナンスを憲法原理と述べてきた。主権者たる国民の半数未満が国会議員の過半数を選出する、即ち、国民の過半数が国会議員の半数以下しか、選任できないような選挙区割りは、国民が主権者であることを前提とする憲法の統治論の下では許されないと主張しているのである。

2.最高裁判所は原告の主張を理解していなかった。

3.この日、他に例を見ない大法廷での最高裁長官と代理人の口頭弁論が行われた。


伊藤真弁護士
(クリックで「弁論要旨」全文へ)
(クリックで「弁論要旨追補」全文へ)
(「弁論要旨」の抜粋)

司法が今まさにその存在意義を示すときと考える。①最大較差2倍未満であれば違憲状態を解消したことにはならないことと、②憲法改正が具体的に論議されようとしている今だからこそ、国家権力の正統性に関わる重大な問題を解決する司法の責任は極めて重いことの2点について述べる。

1 最大較差2倍未満であれば違憲状態を解消したことにはならないこと

2 国家権力の正統性に関わる極めて重大な問題であること

(つづく)


原告本人
(クリックで「陳述要旨」全文へ)
(クリックで「弁論要旨」全文へ)
(クリックで「弁論要旨」資料へ)
(陳述の抜粋)

今回こそ、本法廷の15名の裁判官の過半数の裁判官に、判決において、一人一票の原則を明言していただくために、謹んで私の意見を申し上げます。

Ⅰ なぜ、一人一票でなければならないか?

憲法は代議制を定めています。国民が選挙で国会議員を選出したのちは、国会議員が、その頭による厳格な多数決によって、法律を作り、内閣総理大臣を選びます。
国民は、法律を作ることも、内閣総理大臣を選ぶこともできません。国民が、主権者の権利として、国政に影響力を行使できる ”唯一の機会” が選挙です。主権の行使は選挙しかありません。

民主主義の選挙は、立候補者同士の戦いのみならず、国民自らの戦いでもあります。すなわち、国民は、自らの意思が、国会における多数派となって国政に反映されるべく、草の根の選挙運動を行い、その集大成として、投票日に1票を投じます。

ところが、その集大成の場で、私は、0.55票分の投票しかできませんでした。そのため、私の意思が、有権者の頭数では多数派となっても、国会においては多数派となりません。この不条理が、選挙のたびに、繰り返されてきました。

選挙後は、国会議員が、その頭数による厳格な多数決で国家権力を行使する、そのような代議制だからこそ、国会議員を選ぶ選挙は、主権者の意思を正しく反映する一人一票等価値の選挙であることが要求されます。

Ⅱ 国の目標設定自体が誤り - 国は一人一票でないことの合理性の立証を求められる -

すなわち、”投票価値を平等にすること” を目標とすることが求められます。
しかし、国は、専ら、選挙区間の最大人口差を、衆院では2倍未満、参院では3倍未満にすることを目標とされています。目標自体が誤りであると考えます。
原告は、国勢調査の間に生じた、人口移動等のやむを得ない理由によるのであれば、数学的意味での厳密な一人一票を求めているわけではありません。しかし、一人一票が原則である以上、一人一票でないことの合理性を、国は立証する必要があると考えます(上告理由書46~48頁。甲20〈Karcher v. Daggett事件〉。甲13〈東京高判平成25.3.6(難波孝一裁判長)〉。甲12〈福岡高判平成25.3.18(西謙二裁判長)〉)

Ⅲ 一人一票の実現のために!

米国での、大統領とFBI、大統領とメディアの対立を、みっともない混乱であると揶揄する人がおられます。
しかし、私は、この揶揄は当たらないと思います。なぜなら権力同士が対立し、お互いが牽制し合うことは、独裁を防ぐために必要だからです。

資料10、資料11でお示したとおり、オーストリアの憲法裁判所は大統領選挙のやり直しを、また、米国連邦裁判所は選挙区割りのやり直しを、それぞれ、命じています。

民主主義は、選挙が全てです。

私は、本件裁判を提起し、主権者としての役割を果たしました。あとは、裁判所がその役割を果たされるのみです。
裁判官の皆様で議論を尽くしていただき、1人1票の原則を判決で明言頂きますようお願い申し上げます。 以上

国側の弁論要旨書 (全文)PDF

最高裁判決

最高裁大法廷判決期日は、平成30年12月19日(水)午後3時に指定されました。

裁判所は、民主政治における投票価値の不平等の問題を喫緊の解決課題と位置づけており、判決文においても国に対し「速やかな」抜本的対応を求めていますが、国会は弥縫策を重ねる対応が続きました。

国際情勢は非常なスピードで変化し、国は常に敏速な対応が求められ、そのための国家権力の行使を日々行っています。

しかし、現在の選挙区選出議員(衆参)はいずれも、投票価値の不平等が違憲状態と最高裁が判断した選挙で選ばれた違憲状態議員です。

配布用判決チラシはこちら  ↓

【ちらしを拡大】

違憲判決が出れば、違憲状態の選挙で選ばれた国会議員による憲法改正の発議を行うという憲法の予定していない事態を防ぐことができるでしょう。

今回の裁判で最も注目したい点は、
 【裁判所は、違憲状態の選挙で選ばれた国会議員による憲法改正の発議を許すのか否か】です。

大法廷判決では、どの裁判官が一人一票に賛成なのか、どの裁判官が一人一票を認めたとは言えないかが明らかになります。

一人一票を望む私達主権者は、この最高裁大法廷判決で示される、一人一票に関する各最高裁判事の個別意見の情報に基づき、次回の国民審査を行うことになります

(「切り抜き」国民審査」とは?)

*鬼丸 かおる裁判官は、
平成25年判決(衆)で、平成26年判決(参) 、平成27年判決(衆)の個別意見で、1人1票の原則を認められています。
但し、平成25年判決(衆)では、合理的期間による国会の裁量権を認め、結論は違憲状態の多数意見に賛同しました。その後の平成26年判決(参)、平成29年判決(参)では、合理的期間は既に徒過したとして、当該選挙は違憲違法であると判断されています。
*山本 庸幸裁判官は、
平成29年判決(参)で、1人1票の原則を認めた上で、当該は選挙無効と判断されています。

*岡部 喜代子裁判官及び*山﨑 敏充裁判官 は、
平成26年判決(参)の補足意見で、「投票価値の不均衡の是正は、議会制民主主義の根幹に関わり、国権の最高機関としての国会活動の正統性を支える基本的な条件に関わる極めて重要な問題」と述べ、「違憲状態を解消して民意を適正に反映する選挙制度を構築することは、国民全体のために優先して取り組むべき喫緊の課題と言うべきものである」と述べられています。
両裁判官は、本件投票価値の不均衡の問題が喫緊の重要課題であると明言した以上、前回判決から1年8ヶ月が経過した後も尚、その問題が解決しているとは言えない本件選挙につき、合理的期間を徒過しているとし、違憲違法と判断する可能性は十分予測できます。


【サポーター活動のご案内 ~ 判決日当日の流れ(予定)】
13:30頃 三宅坂小公園 集合(記念撮影)

13:45頃 裁判所前パレード(0.6票君&しんさ君と一緒)

14:00頃 傍聴整理券配布〆切(予定?)

傍聴人が多い場合、抽選となります。
傍聴整理券配布開始時間及び〆切り時間は、追って最高裁より発表されます。(傍聴整理券配布〆切時間は、およそ判決の1時間前ぐらいと予想されます。)
→ 抽選になった場合、整理券配布〆切後直ちに抽選となり、当選の方々は、裁判所の指示に従い裁判所内へ。法廷内は、①貴重品と②筆記用具しか持ち込めません。 カバンはロッカーに預けることになります。

- 開廷のおよそ15分前には着席 -

15:00~ 最高裁大法廷判決言渡し

15:15頃 終了予定

16:00頃? 旗だし(最高裁正門前にて)予定

→ 旗だし後、弁護士グループは、司法記者向けの記者会見のため、東京高裁の司法記者クラブへ移動。(記者会見)

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