

今回の裁判でも、全選挙区(45選挙区)で原告が立ち、選挙の翌日(7/22)に、全14高裁・高裁支部で一斉提訴されました。
さて、前回選挙では3.08倍の1票の不平等がありましたが、3年を経て今回の選挙までに、国会はどのような改善をしたのでしょうか?
結論から言えば、前回(2016)選挙からの改善は、ほぼなかったと言っても差し支えないと思います。
前回選挙(1票の最大較差・3.08倍)について、裁判所は—-
高裁段階では、14裁判体のうち9の裁判体が違憲状態であると判断しました。
さらに、平成30年改正法では、平成27年改正法に定められていたような、立法府の更なる是正の指向を表明する附則すらなくなっています。
仮に、1票の不平等・3.08倍を生じさせる平成30年改正法が国会の参院選挙制度改革の最終回答であるとするならば、平成29年大法廷判決の判断基準に沿って判断すれば、更なる是正の表明を欠いた平成30年改正法の下の本件選挙では違憲判断を回避する考慮要素は見当たらないので、最高裁は、違憲と判断する以外にありません。
過去の1人1票裁判
高裁判決(一覧)
裁判所 | 弁論期日(令和元/2019年) | 判決期日(令和元/2019年) | 結果 | |
---|---|---|---|---|
札幌高裁 | 9月12日(木)15:30 | 10月24日(木)13:10 | (全文) (要旨) | |
仙台高裁 | 9月24日(火)14:30 | 11月5日(火)14:30 | (全文) (要旨) | |
仙台高裁 秋田支部 | 9月17日(火)10:00 | 10月25日(金)14:00 | (全文) (要旨)(骨子) | |
東京高裁 | 9月20日(金)14:00 | 10月30日(水)16:00 | (全文) (要旨) | |
名古屋高裁 | 10月1日(火)13:45 | 11月7日(木)16:00 | (全文) (要旨) | |
名古屋高裁 金沢支部 | 9月24日(火)11:00 | 10月29日(火)11:00 | (全文) (要旨) | |
大阪高裁 | 9月19日(木)14:00 | 10月29日(火)13:15 | (全文) (要旨) | |
広島高裁 | 9月25日(水)15:30 | 11月13日(水)15:00 | (全文) (要旨) | |
広島高裁 岡山支部 | 10月8日(火)11:00 | 10月31日(木)14:00 | (全文) (要旨) | |
広島高裁 松江支部 | 9月30日(水)14:10 | 11月6日(水)14:00 | (全文) (要旨) | |
高松高裁 | 9月11日(水)15:00 | 10月16日(水)13:30 | (全文) (要旨) (骨子) | |
福岡高裁 | 10月2日(水)14:00 | 11月8日(金)15:00 | (全文) (要旨) | |
福岡高裁 宮崎支部 | 9月27日(金)15:30 | 10月30日(水)15:30 | (全文) (要旨) | |
福岡高裁 那覇市部 | 9月25日(水)14:30 | 11月13日(水)14:00 | (全文) (要旨) |
本件選挙の各選挙区の1票価値全国マップ
本件裁判
本件裁判で注目しているのは、以下の5点です。
Ⅰ国は、1票の不平等は地方利益の保護のためであるとしますが、本件選挙で、例えば、宮城選挙区、新潟選挙区の投票価値は福井選挙区の0.34票分です。(全国の1票の不平等マップはこちら)
Ⅱ本件選挙(参)の1票の不平等は3倍です。現在の衆院のそれは1.98倍です。ですから、本件選挙は、1票価値の平等の憲法の要請に関しては、衆参で差異がない、との最高裁判例に反します。
Ⅲ本件裁判は、「違法判断の基準時」である選挙当日の1票の不平等が違憲かどうかのピンポイントの判断を求めています。ですから、裁判所は、将来の国会の努力とは独立して、まず、ストレートに「違法判断の基準時」の選挙の合憲性を判断することが求められます。
Ⅳ憲法研究者の多くは、本件選挙は「違憲状態又は違憲」の意見だと推察されます(45人の学者の論文)。他方、「合憲」の意見と推察される学者の方が2人おられます。(上告人準備書面(1)、同準備書面(3)ご参照ください。
Ⅴ2011年西岡参議院議長が9ブロックの具体案を党会派に提出(同案での最大格差は1対1.066)。
今回、参院選の1人1票裁判の判断が初めてとなる最高裁裁判官は7名。
過半数(8名)の裁判官が「投票価値の平等の憲法の要請に関しては、衆参に差異はなく、憲法は人口比例選挙(1人1票)を要求している」と意見されれば、日本は、1人1票の真の民主主義国家になります。
原告の主張
【高裁】
①訴状
②原告準備書面(1)
③原告準備書面(2)
④原告準備書面(3)
⑤甲1~5、6~9、10~18、19~22、23~33、34~40、41~48、49、50~51、甲52
⑥証拠説明書(1)、証拠説明書(2)
【最高裁】
⑦上告理由書
⑧理由要旨
⑨準備書面(1)
⑩準備書面(1)の【要旨】
⑪【辻村みよ子教授意見書(甲97)】
【辻村教授略歴・著作】
⑫準備書面(2)
⑬準備書面(3)
⑭甲53~70、甲71~85、甲86~92、94~96、甲93、甲98~103、104~110、111~118
⑮証拠説明書(3)、証拠説明書(5)、証拠説明書(6)
被告(国)の主張
下記リンク先のPDFをご参照下さい。
【最高裁】
③被上告人意見
最高裁弁論
最高裁大法廷弁論は、令和2年10月21日(水)13:30に指定されました。
朝日新聞(9/30)で山本庸幸元判事のインタビュー記事が掲載されました。
https://digital.asahi.com/articles/DA3S14640374.html
メディアの関心もこれから高まっていくと思われます。
傍聴できる人数が通常より削減されていますが、感染対策を講じて傍聴が可能です。
当日の予定は今後変更される可能性があります。
当日の予定(暫定案)は、下記チラシをご参照下さいませ。
【チラシを拡大】
最高裁大法廷弁論期日:令和2年10月21日(水)午後1時30分。
快晴。暖か。
午前中は山口邦明弁護士グループの弁論が行われ、午後1時30分から、全国弁護士グループの弁論が行われました。
コロナ禍ということもあり、サポーターの皆様の傍聴はいつもより少なかったのですが、原審原告代理人の弁護士の方々が全国から集まり、いつもどおり、意気揚々と弁論に臨まれました。
最高裁判所構内は、大法廷と同じフロアにある最高裁の正面玄関からの広い通路部分や長椅子のソファやテーブルが置かれている大きなガラス窓に面した待合室の大きな空間は立ち入り禁止にされていました。
傍聴席は一人置きで座るように席の間が開けられ、使用禁止の椅子の背もたれには白いビニール袋がかけられていました。
原審原告側からは、升永英俊弁護士、久保利英明弁護士、伊藤真弁護士、原告本人、の4名が陳述されました。
原告本人の方の弁論の模様が、東京新聞桐山桂一論説委員の私説で報道がありました。
(web記事はこちら)https://www.tokyo-np.co.jp/article/65822?rct=opinion&fbclid=IwAR2HogQKEUNCjxV4guK16AJf9dcT5sToYo4_1w0KFMKWiJxc7I7h8VVL6ZQ
原審被告側からは、武笠圭志指定代理人が陳述されました。
弁論内容は、下記をご参照くださいませ。
弁論後、霞が関の司法記者クラブで記者会見が行われましたが、今回はコロナ感染拡大予防のため、原告側で記者会見に参加したのは、代理人弁護士5名のみとなりました。
![]() (クリックで「弁論の要旨」全文へ) |
升永英俊弁護士:
憲法の投票価値の平等の要請は、衆参で差異はない(平成24年、26年大法廷判決)。 (1)「憲法59条1項」: (2) 「違法判断の基準時」: (3) 「平成29年の大法廷判決の判断基準の誤り」: (4) 「不当な判例変更」: (5)「本件選挙は違憲又は違憲状態であるとの意見であると推察される45人の憲法学者」: 他。 |
![]() (クリックで「弁論要旨」全文へ) |
久保利英明弁護士:
民主国家日本の主権者は国民であり、国民の過半数が国会議員の過半数を選任する「人口比例選挙」が憲法の大原則である。 (2) 衆院選も参院選も、その一票価値は同一であるべきである。 (3) 平成27年の改正法では付則7条で「選挙制度の抜本的見直しについて引き続き検討を行い、必ず結論を得る」と規定されていた。最高裁はこれを理由に平成29年判決を「合憲」としていたが、平成30年改正は弥縫策そのものであり、付則7条も削除された。抜本的な見直しをなすべきは平成29年(2017年)の最高裁大法廷の合憲判決である。 他。 |
![]() (クリックで「弁論要旨」全文へ) |
伊藤真弁護士:
被告の主張する投票価値の平等を後退させる根拠は破綻しており、人口比例原則を後退させる合理的理由が何一つ説明されていないことを裁判所として明確に判断することが、権力分立が機能する国であるための最高裁判所の役割であり、存在意義である。 (1)最高裁判所の役割:本件選挙において、投票価値の不平等ゆえに自分自身の政治的意思を正しく国政に反映させることができなかった少数者の人権を回復することは、最高裁判所の使命である。今回の選挙を違憲無効と裁判所が宣言することは、主権者の多数意思による国家運営という国民主権原理そのものを具現化することにつながり、極めて重要な憲法保障機能を果たすことになる。 (2)参院選挙における投票価値の平等の要請:あらためて平成24年、平成26年判決の判示にある「参議院議員の選挙であること自体から、直ちに投票価値の平等の要請が後退してよいと解すべき理由は見いだし難い。」という指摘の意味を再確認するべきである。 (3)都道府県単位とすることについて:都道府県単位では地域的少数者の意見を尊重し反映することはできない。北海道内の過疎地域の地域的少数者の意見は、福井県民に比べて0.43票の価値しかなく、十分に反映されていない。 他。 |
![]() (クリックで「陳述要旨」全文へ) (クリックで「上申書」全文へ) (クリックで「上申書」資料へ) |
原告の鶴本圭子氏:
「裁判官の仕事は、憲法や法を解釈し、政治がそれらの中で行われることを保障することである。」これは、米連邦最高裁ロバーツ長官の言葉である。 3倍の投票価値の不平等があった本件選挙は違憲であるとの判決を求めている。なぜなら、”1票の価値が不平等な選挙” は、国民の基本的権利は差別してはならないという、憲法の絶対的な理念に反するからである(平等論)。さらには、”1票の価値が不平等な選挙”では、「国民の多数意見が何かを明らかにする」という、選挙本来の目的を果たせないからである(統治論)。 平成29年判決が評価した平成27年改正で、宮城選挙区の投票価値は0.51票から0.34票に悪化しており、190万人の宮城県有権者は、前回選挙、本件選挙ともに選挙権を0.34票に差別された。新潟県有権者190万人も0.34票であった。従って、本件選挙を合憲とする理由を、地方利益の為であるとする国の主張に求めることはできない。 先月亡くなったギンズバーグ米連邦最高裁判事は、判決意見作成にあたって、同僚を説得して一票でも多くの賛成票を得ることに力を注ぐと話している。特に、今回が参院選挙裁判の最後の判断となる裁判官におかれては、そのような説得に力を注がれることを強く希望する。また、もし同僚の説得に失敗しても、反対意見を示し、未来の裁判官を説得されることを希望する。過去の反対意見が、未来の法となり得える。 裁判官お一人お一人が、また、私たち原告が、明日の日本を、よりよい、より正しい、またより平等な国にできる、国家権力を有している。 他。 |
国側の弁論要旨書 | (全文)PDF |
最高裁判決
一人一票を望む私達主権者は、この最高裁大法廷判決で示される、一人一票に関する各最高裁判事の個別意見の情報に基づき、次回の国民審査を行うことになります

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当日の予定は今後変更される可能性があります。
当日の予定(暫定案)は、下記チラシをご参照下さいませ。
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